鬼人幻燈抄 第1話
第1話 鬼人幻燈抄「鬼と人と」天保11年(1840年)、大ききんにより人心が乱れた世において、鬼が人の姿に化け、戯れに人をたぶらかすようになっていた。その頃、江戸の街から遠く離れた山間の葛野という集落に、甚太と鈴音という兄妹が暮らしていた。集落には「いつきひめ」と呼ばれるみこがおり、甚太はその「いつきひめ」を守るみこ守で、集落にあだなす怪異を払いのける鬼切役を命じられていた。ある日、近くの森で鬼が2匹出たと報告があり、甚太は討伐のため森に向かう。そして赤黒い皮膚にざんばら髪、2本の角と屈強な体を持つ鬼に遭遇する。2匹と聞いていたが、その場にいた鬼は1匹のみだった。もう1匹は「葛野の地へ行った」とその鬼は言う。