大学を中退して看病を手伝っていた妹は、町を出て行きたいが閉塞感と絶望しかない現状に怒りをあらわにして夜の町へ飛び出し、姉は手際良く魚をさばき、調理し、食べることで静かな怒りを胸の中に押し込める。だが、その夜、メアリー・ベスは外出先である男を殺してしまう。姉の助けを借りて死体を魚用クーラーボックスに入れて海に沈めるが、後日海から上がったのは、殺害された若い女性の死体だった……。
アメリカ・メイン州の架空の小さな漁業の町、イースター・コーヴを舞台にした『ブロー・ザ・マン・ダウン~女たちの協定~』は、冒頭から誰もがコーエン兄弟の『ファーゴ』(1996)を思い出さずにはいられないだろう。寒風が吹き荒ぶ雪景色に、ブルートーンで統一された、冷気が伝わるような映像世界(撮影監督はトッド・バンハーズル)。血まみれの殺人事件、魚の骨抜きナイフ、現金がつまった袋、海を見渡す売春宿。一方で住人たちは数十年来の知り合いだらけで、いかにも田舎の素朴で世話焼きな婦人たちの姿は一見すると平和的に映る。だが偶然にも犯罪に手を染めた姉妹の行為は、思いがけない形で町の水面下に横たわる暗い秘密を暴いていく。
原題:BLOW THE MAN DOWN
製作年度:2019年
製作国:アメリカ
監督:ブリジェット・サヴェージ・コール、ダニエル・クルディ
出演:デイビット・コフィン、デイビット・プリデモア、アダム・ウルフ・マイヤーソン、マーク・S・カルティエ、メレディス・ホルツマン